花王も「AIが迷うサイト」だった!大企業が動く今、中小の勝ち筋

2026年9月1日、日本経済新聞が報じました。花王、森永製菓、ユニ・チャームが、生成AI向けに自社サイトの商品情報を作り直し始めた、と。見出しには「チャット経由の買い物増に対応」とあります。AIでの買い物が増えたから、自社サイトを直す。ここに、中小企業がそのまま使える話が詰まっています。


1. 花王が認めた「AIが迷う構造」

日経の記事は、動機をはっきり書いています。消費者がAIとの対話を通してECサイトへ流入する傾向が強まっているから、メーカーが自社サイトの商品情報を見直し始めた、と。

数字も出ています。日経が引用した英ユーロモニターの消費財EC購買調査(2025年、日本や欧米など44カ国)では、AI経由のサイト流入が前年から急増。AIに推薦される商品やブランドづくりが、新しい競争軸になりつつあるとしています。

そのうえで花王は、2026年内にもAIに推薦されやすい情報発信の指針を策定するとのこと。ブランドサイトを見直し、商品の特長・効果・根拠データを項目ごとに整理する。

出発点にある認識が、私にはいちばん響きました。ブランドごとに情報のまとめ方がばらばらで、AIが迷う構造になっている。だからコーポレートサイトも含めて見直す、と。

あの花王が、です。世界に通用するブランドを何十と持ち、デジタル戦略の専門部署がある会社が、「うちのサイトはAIが迷う」と認めて手を入れ始めた。

そして記事でもっとも重要な一文。ユーロモニターのアナリスト、ラビア・ヤスメーン氏が取材に対し、AIとの対話では大手や強いブランドでも優位は保証されないと指摘しています。

従来の検索は、被リンクやドメインの歴史で決まる「サイトの力」勝負でした。大企業が圧倒的に有利な土俵です。ところがAIは、質問の条件にその場でマッチングする。「〇〇市で難削材の加工ができる会社は?」に対して、一番有名な会社ではなく、一番条件に合う情報を明確に書いている会社を返そうとします。


2. ただし「AIの中で買い物が完結する」は、一度失敗している

ここは正確に押さえておいてください。営業トークに惑わされないための予防線です。

OpenAIは2025年9月29日、ChatGPT内で決済まで完結できる「インスタント・チェックアウト」を米国で開始しました。当時は「Webサイトを見ずにAI上だけで買い物が終わる時代が来る」と大きく報じられ、私も著書でそう書きました。

ところが2026年3月4日、OpenAIはこの機能を終了しています。

理由は、単純に使われなかったから。開始時は米国のEtsy出品者の単品購入のみ。Shopifyの数百万店のうち実際に稼働したのは十数店にとどまったと、Shopify社長のハーレー・フィンケルスタイン氏が明かしています。商品情報をOpenAI側がスクレイピングで集めていたため、在庫や送料が実態と合わない。AIが「買う」ところまで担うには、情報が正確すぎるほど正確でないと成立しなかったわけです。

OpenAIは同年3月24日、商品の発見と比較に軸足を移した新しいショッピング体験へ切り替えました。

つまり今のところ、こういう形に落ち着いています。AIで見つけて、買うのは自社サイトやECで。

これが中小企業にとって、非常に良い知らせです。ECを持っていなくても構造は同じだから。AIで見つけてもらい、自社サイトで確かめてもらい、問い合わせを受ける。AIがどこまで進化しても、受け皿は自社サイトという結論は変わりません。花王が自社ブランドサイトを直しているのも、まさにそこが「買う場所」だからです。


3. なぜ「AIが迷う構造」になるのか——制作30年の現場から

私はWeb業界で30年、1,000社以上のサイトに関わってきました。その経験から言うと、花王の状況は特殊でも怠慢でもありません。大企業なら、ほぼ必然的にそうなります。

ひとつ目は、ブランドごとに別々に作られてきたこと。扱うブランドが数十あれば、立ち上げ時期も担当部署も、制作会社すら違う。その都度その都度、最適なものを作ってきた結果、情報の粒度も、項目の並びも、言葉づかいもばらける。悪気なく、自然にそうなります。

ふたつ目は、制作する側の視野。これは私の推測ですが、依頼を受けた制作者は「担当するブランドの一部分」だけを見て仕事をしがちです。会社全体を俯瞰し、他ブランドとの整合性まで考える立場にいない。発注の構造上、そうならざるを得ないのです。

三つ目は、ブランドサイトがイメージ重視だということ。世界観を伝えるためにデザインが先行し、画像が増え、文字が減る。美しい写真の上に短いコピー。人間の閲覧体験としては正しい設計です。でもAIから見ると、商品名と効果と根拠が構造的につながっていない。人間には美しく、AIには読めないサイトができあがります。

そのうえで、あえて正直に書きます。Web制作者側のAI検索対応(LLMO対策)の知識は、まだまだ浅いのが実情です。他社が制作したサイトを見ていると、LLMO以前に、SEO対策すらあやしいものがかなり多いと感じます。

だから「制作会社に任せてあるから大丈夫」は、残念ながら安心材料になりません。発注する側が最低限の判断軸を持っておく必要がある。花王が社内で「指針」を作ろうとしているのは、まさにそういうことだと思います。


4. 森永が捨てたもの——「画像の中の文字」

今回もっとも真似しやすいのが森永製菓の事例です。

森永は2026年3月、「チョコモナカジャンボ」の訪日外国人向けサイトを刷新しました。日経によれば、刷新前の問題はこうです。従来は画像やPDFに埋め込まれた文字情報が多く、AIが内容を把握しにくい設計になっていた。

読んで「やっぱりそこか」と声が出ました。私が中小企業のサイトを診断していて、いちばん多く指摘するのがまったく同じ問題だからです。

あなたのサイトで、これらが画像やPDFになっていませんか。

  • 料金表・価格バナー(「月額5,000円〜」「初期費用0円」)
  • 営業時間・定休日・対応エリア
  • 実績数字(「累計1,200社」「創業50年」)
  • サービスの特長を並べた図解
  • 会社案内PDFだけで、HTMLページがない

「altテキストを入れればいい」も解になりません。ClaudeやGeminiは読めても、ChatGPTはaltテキストを読みません。デザインの都合で画像にするなら、同じ内容をテキストでも近くに置く。それだけで通ります。

森永がもう一つやったのが、食感などを文字情報にしたこと。AIは言語で世界を理解します。「日本で買うべきアイスは?」と聞かれたとき、AIが使えるのは言語化された描写だけです。

食品業界に限りません。抽象語を、触れる言葉と数字に置き換えてください。

  • 清掃業:「ピカピカに」→「油膜を落とし、指で触ってもぬめりが残らない状態まで」
  • 士業:「親身に対応」→「初回60分、資料がなくても口頭のヒアリングだけで受けます」
  • 製造業:「高精度」→「公差±0.01mm、抜き取りではなく全数検査」

5. おすすめしたいサイト改善

大企業のように指針を作る必要はありません。中小企業なら、社長がその場で決めて直せます。効果の大きい順に。

画像の中の文字を、テキストに書き出す【LLMO&SEO】

森永と同じ穴です。価格、営業時間、対応エリア、実績数字。ここから着手すれば、費用ゼロで効果が出ます。

現場に届く質問を、FAQに書く【LLMO&SEO】

担当者が想像で作った想定問答は、まず引用されません。営業やサポートに実際に来る質問が一次情報です。結論を先に、そのあとに数字。「工事期間は内容によって異なります」ではなく「キッチン交換は3〜5日。住みながら工事できます」。

「できないこと」も書く【LLMO&SEO】

「従業員5名以下の会社様はお断りしています」のような除外条件。AIは利用者の条件で絞り込みたいので、向かない相手が明記されたページを重宝します。正直に書くほど推薦されやすくなり、無駄な問い合わせも減ります。

構造化データを入れる【LLMO&SEO】

必要なのは実質5つ。Organization(トップページに必須)、BreadcrumbList(全ページ)、FAQPage、Article、Product。制作会社に「うちは何が入っていますか」と聞くところから始めてください。

AIに自社を聞いてみる【LLMOのみ】

ChatGPT・Gemini・Perplexityに「〇〇市で△△を依頼できる会社は?」「〇〇株式会社の評判は?」。自社が出るか、競合はどこか、内容は正しいか。月1回の定点観測で十分です。

なお、話題のllms.txtは優先度を下げてかまいません。Googleの公式ドキュメントは、Google検索とその生成AI機能がこの種のファイルを使っていないと明記しています。約30万ドメインを対象にした調査でも、設置の有無と引用されやすさに統計的な関係は確認されていません。「これを入れればAIに載ります」という営業には、お金を出さないでください。その予算でFAQを3本書くほうが確実です。


セミナーのご案内

AI検索経由で問い合わせが入った会社が、その前に何をしていたのか。書き換えた文章やFAQの実物をお見せします。

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出典

芝田弘美(しばた ひろみ)

プリズムゲート株式会社 代表取締役

中央大学商学部でマーケティングを学び、大手コンビニエンスストア本部を経て、1996年にWebデザイナーへ転身。2000年にプリズムゲート株式会社を設立。Web業界歴は約30年、累計1,000社以上のコーポレートサイト制作・運営に携わる。現在も約100社のサイト運営を支援しながら「AIがどのサイトを引用するか」を現場で日々検証している。

著書:『士業のためのホームページのつくりかた』『儲かる会社はホームページが9割!』『ホームページ集客大全100』『はじめてのWebライティング大全100』
最新刊として、2026年6月29日『今すぐできるLLMO・AIO[AI最適化]実践テクニック100』(秀和システム新社)を発売。

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